みかんの産地で有名な紀州の山にハイキングに出かけました。
京阪神を起点としたハイキングではあまり馴染みなさそうな山域ですが、ガイドブックに“展望がよく11月から12月まで黄金に輝く”みかんの山と紹介されていました。
全体のコースは長峰山脈を南北に縦断するもので、みかん畑の山中では農道が方々で分岐し行き先を惑わす按配になっています。地図が読める人の同行が必要です。
みかんの木
山麓から岩室城址の案内板に導かれ、みかん畑の農道を登っていきます。岩室山の岩壁が行き先のよい目印になっています。
みかん畑の農道を登りつめると岩室城址
岩室山の山頂は木立に囲まれた小さな公園で、南と西の一部分が伐採されて景色が覗けます。山頂の南側は絶壁です。その岩場から眼下に広がるみかん畑、有田川を隔てて遠く紀伊の山並みまで大展望が楽しめます。
岩室山の眺望
ここまでは、登りも楽なハイキングでした。一山越えてその先も楽だろうとは、たいへんな見込み違いでした。
まず、農道から地図上に記された山脈越えの山道に分け入る分岐が、定かに見分けられませんでした。すこし遠回りになりますが、農道を登りつめ風力発電の風車が建ち並ぶ山稜を越して行きます。
下りに入った農道は一車線の舗装路ですが、路面を見る限り人やクルマがよく通る道でもなさそうです。人里近いとはいえ、往来絶えて人の気配のない道を一人行くのは、心細いものです。
山の斜面に広がるみかん畑の中を基幹農道と方々に分岐道が続きます。もう一つの展望台、岳山へは姫島神社の案内標識が目印になりました。山頂からは遠く和歌浦の海岸が望めました。
岳山の眺望
陽が西に傾きはじめました。後は山麓まで下るだけです。
ガイドブックの案内コースに沿ってみかん畑の中の道を下っていくと、通行止めの鉄柵がありました。クルマは通れなくても、このまま下れば山麓の集落に合流するはずと、鉄柵を乗り越えその先の道に踏み出しました。
辺りは薄暗い竹林になり倒木が折り重なる荒れ放題の道に変わっていきます。それでも舗装路なので迷うこともなかろうと構わず突き進んでいきましたが…
曲がり道の先に現れたものは、舗装路を突き破って一寸の隙もなく密生して道を塞ぐ“竹の壁”でした。突如目の前に立ち塞がったその異様な光景に、少し戦慄さえ覚えました。
そこを迂回した先には人跡未踏の竹林が広がっていました。道は途絶えその痕跡もありません。古いガイドブックのコースでしたが、1990年刊行された当時はここもみかん畑?
時間が許せば、見通しの利かない竹林の中を磁石と地図を頼りに彷徨するのもまた一興ですが(負け惜しみです)、下ってきた道を素直に鉄柵まで引き返しました。
かなり遠回りになりますが、確実に山麓まで続く基幹農道を下っていくことにします。
山麓には熊野古道の王子跡が点在します。山間の辺鄙な集落を想像していましたが、歴史のあるみかんの一大産地だけあって寂れた様子は微塵もありません。バス停留所の近くに、車道とは別に立派な木橋が架かっていました。
加茂郷の駅に向かうバスは1日に3本です。時刻に間に合うよう下山しましたが、バス待ち時間で駅まで歩けそうです。当然、歩きます。駅に着いて日没になりました。
熊野古道 加茂川に架かる木橋
帰宅してから、踏破した道程を地図上で測ってみると25kmでした。30分の昼食休憩の外は、5時間ほぼ歩き通しました。
因みに、ガイドブックのコース案内は(バスに乗って駅まで向かう道程は別にして)12km 4時間です。