ワイヤー アンテナ・ステー（給電側）
延長アンテナ線でワイヤーアンテナの調整
第2級アマチュア無線の免許取得が一段落し、アンテナの工作を再開します。
手始めに、前回の続きでアンテナの素性を探るところから見直してみます。
共同住宅2階ベランダにワイヤー・アンテナ（支間 8ｍ）を設置。ワイヤーアンテナの末端に備えておいたギボシ端子で、少し長めのコードを連結してアンテナ線を延長。
ワイヤー アンテナ・ステー（給電側）
延長アンテナ線でワイヤーアンテナの調整
直径9��～10�僉�35ターンのエナメル巻き線のトロイダルコイル。網カゴに収めて室外機につるし下げ、ここに延長アンテナ線を中継したときの効果をみる。
延長アンテナ線にコイルをつないでみる
同軸ケーブルの室内引き込みは、空調用キャップにM型コネクタとコモンモード・チョークの組み合わせ。
同軸ケーブル引き込み
（マウスオンでロールオーバー）
アンテナ線とアースをM型コネクタにつなぎ、これに送信（同軸）ケーブルをつないで、室内でアンテナ（のSWR）を計測したのが前回まで。
同軸ケーブルをアンテナ線に直結
SWRは本来、送信（同軸）ケーブルの終端・アンテナ直下で計測すべきものですが、（屋外の高所作業で、デジカメで近接撮影する）nanoVNAの画面キャプチャが面倒だったので、いままで簡便に済ませていました。
見直したのは、屋内へ引き込む（送信同軸ケーブルの）部分。その部分の影響を排除して、アンテナを計測することにします。
送信ケーブル先に50Ω負荷
アンテナ直下にnanoVNA
アンテナの計測の前に、まずは“その部分の影響”を確認します。
送信同軸ケーブルの先に50Ωのダミーロードをつなぎ、（コモンモード・チョークを通し）前のように室内で計測します。
送信同軸ケーブルの室内引き込みを調べる
当然ですが、インピーダンスの表示（緑色のマーカ）はスミスチャートの中心にあり、レジスタンス（水色の線）は50Ω、インダクタンス（紫色の線）は0Ωです（スミスチャートの実軸上）。
1.0MHzから10MHz
8.0MHzから16MHz
SWRは周波数が上がるにつれ、1.0から緩やかに上昇傾向にあります。
16MHzから22MHz
22MHzから26MHz
50MHz帯でSWRが目に見えて上昇します。コモンモード・チョーク（のコア材、またはコイル巻き）の影響でしょうか？
26MHzから30MHz
48MHzから56MHz
本題のアンテナ計測です。
はじめは（延長アンテナ線のみで）網カゴのトロイダルコイルの接続を外した状態です。
アマチュアバンドを含む1MHzから60MHzまでの帯域を観察すると、半波長（とその整数倍）相当の周波数で高インピーダンスを示し、室内計測とは著しく異なったグラフ（マウスオンでロールオーバー）を描いています。
アンテナの整合を調べる
（マウスオンでロールオーバー）
7MHz帯（付近）は、5.9MHzあたりでインダクタンスが実軸と交差する緩やかなカーブが見られます。
1.0MHzから10MHz
（マウスオンでロールオーバー）
8.0MHzから16MHz
（マウスオンでロールオーバー）
10MHz・14MHz帯（付近）は、13.5MHz付近でインピーダンスの急上昇がみられます。
18MHz帯（付近）はインダクタンスが実軸と交差する緩やかなカーブが見られ、18.19MHzでSWRが2.8に落ます。
16MHzから22MHz
（マウスオンでロールオーバー）
22MHzから26MHz
（マウスオンでロールオーバー）
24MHz帯・28MHz帯・50MHz帯は、インダクタンス、レジスタンスとも大きな値を示しています。
とりわけ、27MHz、54MHzあたりでインピーダンスの急上昇がみられます。
26MHzから30MHz
（マウスオンでロールオーバー）
48MHzから56MHz
（マウスオンでロールオーバー）
調整範囲の広いアンテナ・カプラなら、7MHz帯と18MHz帯で整合しそうな感じ（？）
次いで、延長アンテナ線と網カゴのトロイダルコイルを接続して測定。
アマチュアバンドを含む1MHzから60MHzまでの帯域を観察すると、高インピーダンスを示す周波数が倍増し、室内計測とは著しく異なったインダクタンスのグラフ（マウスオンでロールオーバー）を描いています。
アンテナの整合を調べる
（マウスオンでロールオーバー）
3.8MHz帯付近にSWRの落ち込み（4.19MHz SWR1.8）があり、7MHz帯付近は6.8MHzあたりでインダクタンスが実軸と交差する緩やかなカーブが見られます。
1.0MHzから10MHz
（マウスオンでロールオーバー）
8.0MHzから16MHz
（マウスオンでロールオーバー）
10MHz・14MHz帯の帯域を挟んで、13.8MHz付近でインピーダンスの急上昇がみられます。また、15.8MHzでインダクタンスが実軸と交差する緩やかなカーブが見られます。
18MHz帯付近はインダクタンスが実軸と交差する緩やかなカーブが見られ、18.8MHzでSWRが2.1に落ちます。
16MHzから22MHz
（マウスオンでロールオーバー）
22MHzから26MHz
（マウスオンでロールオーバー）
24MHz帯付近はインダクタンスが実軸と交差する緩やかなカーブが見られ、24.2MHzでSWRが1.4に落ちます。
28MHz帯は、インダクタンス、レジスタンスとも大きな値を示しています。
26MHzから30MHz
（マウスオンでロールオーバー）
48MHzから56MHz
（マウスオンでロールオーバー）
50MHz帯はインダクタンス、レジスタンスとも大きな値を示しています。
周波数帯が上がると等レジスタンス円に沿うように小さくなるスミスチャートの様子が見てとれ、興味深いです。このあたりがアンテナの素性？
アンテナ線をもう少し低い周波数に合わせてみます。
網カゴのトロイダルコイルを2連結する
2連結コイルのインピーダンス周波数特性
2連結した網カゴのトロイダルコイルをエアコン室外機の下に吊るして、延長アンテナ線を中継します。
延長アンテナ線に2連結コイルをつないでみる
先と同様に、屋外のアンテナ直下と、コモンモードチョークを通した室内で、それぞれアンテナの測定を行います。
アマチュアバンドを含む1MHzから60MHzまでの帯域を観察すると、高インピーダンスを示す周波数は、全体的にはトロイダルコイル1つの場合と、ほぼ同じ傾向を示しています。
また、室内計測したインダクタンスが、アンテナ直下と著しく異なるグラフ（マウスオンでロールオーバー）を描くところも類似しています。
アンテナの整合を調べる
（マウスオンでロールオーバー）
7MHz帯付近は6.9MHzあたりでインダクタンスが実軸と交差する緩やかなカーブが見られます。
1.0MHzから10MHz
（マウスオンでロールオーバー）
8.0MHzから16MHz
（マウスオンでロールオーバー）
10MHz・14MHz帯の帯域を挟んで、12.6MHz付近でインピーダンスの急上昇がみられます。また、15.7MHzにSWRの落ち込みが見られます。。
18MHz帯付近では、インピーダンスが急上昇する19MHzを挟んで、16.8MHzと19.8MHzにSWRの落ち込みが見られます。
16MHzから22MHz
（マウスオンでロールオーバー）
22MHzから26MHz
（マウスオンでロールオーバー）
24MHz帯付近はインダクタンスが実軸と交差する緩やかなカーブが見られ、23.1MHzでSWRが1.3に落ちます。
28MHz帯は、インダクタンス、レジスタンスとも大きな値を示しています。
26MHzから30MHz
（マウスオンでロールオーバー）
48MHzから56MHz
（マウスオンでロールオーバー）
50MHz付近は49.8Hzあたりでインダクタンスが実軸と交差する緩やかなカーブが見られます。
インダクタンスを計測したグラフが、アンテナ直下と室内のそれぞれで著しく異なるにも関わらず、SWRを見比べると、アンテナ直下と室内とも、ほぼ同じ周波数でSWRが落ち込んでいます。
3.5MHz帯から24MHz帯までは、調整範囲の広いアンテナ・カプラを使って整合できそうな感触です。
試行錯誤、まだまだ続きます。
スミスチャートのソフトウェア・ツール Smith V4.1 
を利用し、机上でインピーダンス整合を探ってみます。
2連結トロイダルコイルに延長アンテナ線を中継したアンテナに、π型アンテナ・カプラで整合するという図です。
nanoVNAで実測したアンテナのインピーダンスをスミスチャートにプロットし、コンデンサとコイルを適当に組み合わせて等レジスタンス円と等コンダクタンス円の上を周回させ、スミスチャートの中心に合わせます。
ソフトウェア・ツールの便利さで、コンデンサとコイルを自在に扱い、スミスチャートの中心に至る軌跡が幾通りも描けます。
3.5MHz帯（3.52MHz R：48.5Ω／X：492Ω）の例。周波数を3.50MHzから3.58MHzまでスイープすると、SWRは1.2を超えます。なお、プロットがほぼ50Ωの等レジスタンス円の上にあるので、π型でなく、91.8pFのコンデンサを直列につなぐだけでSWRは1.0に落ちます。スイープもSWR1.2内です。（耐圧と絶縁で別の課題はありそうです）
3.7MHz帯（3.79MHz R：1kΩ／X：2.29kΩ）の例。周波数を3.791MHzから3.805MHzまでスイープして、SWRは1.2内です。高インピーダンスにあり、最良の整合を得るアンテナ側のコンデンサの調整はシビアです。なお、EFHWよろしく、巻き数比1：0.09のUNUNに1.9nFのコンデンサでもSWRは1.0に落ちます。スイープしてもほぼSWR1.0です。
3.5MHz帯 π型インピーダンス整合
（ 186pF・22μH・324pF ）
3.7MHz帯 π型インピーダンス整合
（ 99pF・21μH・441pF ）
7MHz帯（7.03MHz R：9.29Ω／X：9.05Ω）の例。周波数を7.00MHzから7.20MHzまでスイープして、SWRはほとんど1.0です。なお、周波数を上げて実測した値（7.165MHz R：7.35Ω／X：50.0Ω）を用いてπ型インピーダンス整合（ 762pF・1.9μH・761pF ）させてスイープすると、SWRは1.2を超えます。
10MHz帯（10.12MHz R：24.4Ω／X：588Ω）の例。周波数を10.10MHzから10.15MHzまでスイープして、SWRは1.2内です。
7MHz帯 π型インピーダンス整合
（ 681pF・370nH・680pF ）
10MHz帯 π型インピーダンス整合
（ 46pF・13μH・92pF ）
14MHz帯（14.0MHz R：74.2Ω／X：-734Ω）の例。周波数を14.0MHzから14.35MHzまでスイープして、SWRは1.2内です。
18MHz帯（18.07MHz R：63.3Ω／X：476Ω）の例。周波数を18.07MHzから18.16MHzまでスイープして、SWRは1.2内です。
14MHz帯 π型インピーダンス整合
（ 5pF・6.5μH・96pF ）
18MHz帯 π型インピーダンス整合
（ 40pF・30μH・76pF ）
21MHz帯（21.01MHz R：51.9Ω／X：356Ω）の例。周波数を21.0MHzから21.45MHzまでスイープすると、SWRは1.2を超えます。
24MHz帯（24.9MHz R：73.8Ω／X：502Ω）の例。周波数を24.89MHzから24.99MHzまでスイープして、SWRは1.2内です。
21MHz帯 π型インピーダンス整合
（ 43pF・2.6μH・49pF ）
24MHz帯 π型インピーダンス整合
（ 30pF・2.4μH・72pF ）
28MHz帯（28.0MHz R：317Ω／X：1.79kΩ）の例。周波数を28.0MHzから29.7MHzまでスイープすると、SWRは1.5を遥かに超えます。高インピーダンスにあり、最良の整合を得るアンテナ側のコンデンサの調整はとてもシビアです。なお、巻き数比1：0.07のUNUNに629pFのコンデンサで整合させると、SWRは（スイープしても）1.2以内に収まります。
50MHz帯（50.04MHz R：150.6Ω／X：130.2Ω）の例。周波数を50.0MHzから52.9MHzまでスイープすると、SWRは1.2を超えます。なお、周波数を上げて実測した値（51.08MHz R：72.Ω／X：491Ω）を用いて、巻き数比1：0.12のUNUNに427pFのコンデンサで整合させると、SWRは（51.4MHzまでは）1.2以内に収まります。
28MHz帯 π型インピーダンス整合
（ 11pF・3.9μH・41pF ）
50MHz帯 π型インピーダンス整合
（ 36pF・353nH・12pF ）
アンテナが高インピーダンスにある場合、π型アンテナ・カプラはアンテナ側のコンデンサがスミスチャート上で50Ωの等レジスタンス円の外に出る（程々に大きな）容量でないと、整合しません。
また、“遠回りの軌跡”を描くと、コイルはともかく、コンデンサは（普通のタイトバリコンにないほど）大きな容量となります。
各バンドに合わせた適切なコイルと、精密に調整できるタイトバリコンを設けたアンテナ・カプラが作成できれば、インピーダンス整合も実現できそうな感じです。
・・・と、その前に、アンテナ・カプラで調整しやすいアンテナを揚げるのが肝要かも。
適当にアンテナを揚げて、市販のアンテナチューナーをつないでも、意図したとおりSWRが1.0に下がり切らないこともある（らしい）ことも、なんとなくわかりました。
試行錯誤、まだまだ続きます。
