美術館へ(その3)

令和7年(2025年)10月8日(水)

ゴッホの展覧会が神戸で開催されるので、妻と連れ添って来ました。「大ゴッホ展」(第1期 夜のカフェテラス)が、神戸で阪神・淡路大震災30年、翌年に福島で東日本大震災15年、次に東京で…と節目のイベントで本邦を巡回開催します。

Webサイトから前売りQRチケットを購入して、行楽の季節にでも…と、カレンダーに予定を書き込みました。

神戸三ノ宮駅の周辺の街路は、神戸市立博物館へ誘うように幾つも「大ゴッホ展」の幟が掲げられています。

平日の朝の通勤ラッシュを避けて少し早く自宅を出発し、博物館9時30分オープン前に着きました。朝から長い行列ができて、その人気が伺えます。


オープン前に行列ができる博物館
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3階展示室前で前回のように音声ガイドのヘッドセットを借り受け入室。

展示内容は、作風に影響を受けた画家と移り住む地の題材で、作品の変遷が辿れるように、ゴッホの描きたかった・描こうとしたものが、わかりやすく展示されています。

今回見たゴッホの作品の中で一番印象的だったのは(4本の木のある)『秋の風景』(1885年)でした。落葉した柳の木に並ぶ3本の枯葉色に染まりゆく栗の木の精緻な描写。一葉ごと色を変えて丹念に描き上げ、油彩画の配色に自信をつけた初期の作品だそう。

印象派の影響を受けた(後期の・有名な)作品も美術鑑賞にはいい刺戟になりますが、(齢のせいか)郷愁に似た気持ちにさせる風景画により強く惹かれました。

暗い部屋で『食事をする農婦』(1885年)は、窓明かりが逆光になり、人物が暗く陰になって描かれています。絵画の暗部に目を摺り寄せると、黒塗りの明暗差に(衣装の)ディテールが見て取れ感嘆しました。星降る夜空の闇に眼を慣らして(瞳孔を開いて)僅かな光を捉えて見るような感覚です。

本展覧会の呼び物、人気作品『夜のカフェテラス』は、順一列に並んでひしめく人の群れに混じって見ました。鑑賞するというよりは、一目見て素早く写真を撮って列を離れるといったふう。“写真OK”なのが、せめてもの救いです。


順一列に並んで見る『夜のカフェテラス』
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それにしても、クレラー・ミュラー美術館由来のシンプルな木枠の額縁。

昔読んだ本の中で、“絵画の額縁の効用(意義?)”を説いたものがありました。豪奢な額飾りも、それなりに・いくつか理由あって…と(うろ覚えですが)その中に吹き出しそうになった一節がありました。

曰く、立派な額縁は、そこに収められている絵画に価値があることを示している…と。

額縁の見た目に惑わされず作品を評価・鑑賞したい向きには、シンプルな額縁ほうがイイね…という配慮でしょうか。

同じく“写真OK”の『ゴッホの自画像』。その掲げられた壁を広く入れて(フルオートで)写真を撮ると、壁面の深い緑色にデジカメの露出・ホワイトバランス調整が引っ張られて、白い肌に(補色の)赤みが掛かります。撮った写真を見返して、実物の見た目と少し違った印象になります。

ゴッホの自画像
ゴッホの自画像
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同じく“写真OK”の『レストランの室内』。点描で描かれた壁に、映える“作中”絵画。額縁がなくても、そこに存在感を示しています。

昔、フィルムカメラ用ASA(ISO)400の高感度フィルムが出始めた頃、DPEから返ってきた写真をみて、その粒状感の粗さに驚きました。点描で描かれた絵画は、例えるならうんと粒状感を出したフィルム写真でしょうか。粒状感をなくして解像度を上げたのが、ここに描かれた“作中”絵画でした。


『レストランの室内』
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洋画の鑑賞に70分、1階ホールの土産物売り場で妻が気前よく7千円散財しました。絵葉書に『秋の風景』をリクエストしましたが、その図版は全然冴えません。実物をじっくり鑑賞することの意味を、改めて実感しました。

博物館ホール
博物館ホール

博物館を出ると、外は暑い陽射し。同じく博物館を出た親切な女性の方に、記念写真をお願いしました。


記念写真

博物館の向かいに、レトロ調の電話ボックスがありました。劣化して剥げ落ちる白ペンキは、どれほど古びても固定電話を存続させる(震災に遭った)神戸市の意地(?)を示すかのよう。朽ちる前に塗り治しましょう…ね。


レトロ調の電話ボックス

昼食はお洒落なイタリアンレストランにしました。11時30分の開店前に着き、街路のベンチで待機。


神戸市役所前のイタリアンレストラン

評判のお店らしく、12時には満席になりました。ランチメニューは一品です。“本日のパスタ”は豚ロースの焼きネギソース、ミニサラダ付きで1000円。大変美味でした。ごちそうさまでした。

すぐ満席になるお洒落な店内
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幾何学模様

本日のランチ(一品)パスタ


神戸市内に下宿していた大学生の頃、(生活圏内の)市街地観光は、ほとんど見向きしませんでした。この機会に、南京町の中華街に立ち寄ってみました。

飲食店が軒を並べ、飲茶の点心を食べ歩く国内外の旅行客で混雑していました。雑踏は苦手。


南京町の中華街

妻のリクエストで朱印帳を携え、三宮神社へ。指定時間の14時に御朱印をもらって、帰宅の途につきました。

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